長崎大学 北潔教授のチームにより「5-ALAが新型コロナウイルスの増殖を100%阻害する」という内容の論文が発表されました。それから一気に注目された5-ALAとはどういった成分なのでしょうか。
「生命の根源物質」、天然アミノ酸5-ALA(以下、SBI Pharma社HPより抜粋)
5-ALAは5-アミノレブリン酸の略称で、地球上のさまざまな生命、例えば植物や動物などが普遍的に作り出している「アミノ酸」の一種です。
5-ALAはGABA(ガンマアミノ酪酸)やオルニチンと呼ばれる他のアミノ酸に似た形をしていますが、その起源は非常に古く、36~40億年前に存在した現在地球上に存在する生命すべての共通祖先まで辿ることができると考えられています。
ですが、他のアミノ酸と違ってタンパク質の構成成分ではありません。人体での5-ALAの役割はただひとつであり、ヘムという物質のもととなることです。
8個の5-ALAが合わさって出来上がるヘムはさまざまな生命活動の鍵となります。身近な例では、酸素を全身に行き渡らせる血中の赤い色素(ヘモグロビン)に含まれており、酸素とヘムが周囲の環境に応じ結合したり、離れたりすることで、酸素が肺から体のすみずみにまで届けられることが知られています。
さらに、ヘムは食物と酸素からエネルギーを取り出すという、我々の生命活動の根本を担う「呼吸鎖複合体」の中心的物質でもあります。5-ALAがなければ私たちはエネルギーを得る事が出来ず、活動すらできません。また、植物の光合成の中心を担う葉緑素は、8個の5-ALAが合わさることで出来上がる、ヘムに瓜二つの物質です。
植物は光合成により、光と二酸化炭素から酸素と自らの体を生み出します。
人を含む動物は、酸素と植物の体を消費して二酸化炭素を吐き出し、その二酸化炭素を使ってまた植物が育ちます。太古の昔より続いていたこの生命のエネルギー循環は、その両輪であるヘムと葉緑素を生み出す5-ALAなしでは決して成り立ちません。
5-ALAは、地上の生命を今の姿に形作った源、まさに生命の根源物質と言えるかもしれません。

光合成と自然循環
5-ALAの産業化ヒストリー
5-アミノレブリン酸(5-ALA)は1950年代に米国の故デイビッド・シェミン博士(コロンビア大学)によって発見されて以降、20世紀を通じて多くの学者によって基礎生物学の研究が進められてきました。一方で、5-ALAを化学合成する方法は非常に煩雑であり、その価格は同じ重さのプラチナを上回るほどでした。
しかし、20世紀後半になり、後述する5-ALAの医学面での応用可能性が知られるようになると、
にわかに5-ALAを大量製造しようとする動きが活発化します。
安全で高効率な化学合成法が追求される一方で、日本では微生物発酵技術による生産がさかんに研究されるようになりました。
故・佐々木健博士(広島国際学院大学 元学長)らが発明した光合成細菌「ロドバクター・スフェロイデス」を用いた方法が先駆けて実用化された他、近年では日本発の、うま味調味料生産に使われる微生物「コリネバクテリウム・グルタミカム」や非病原性の大腸菌により、より高い効率での生産が可能となっています。
摂取した5-ALAはどうやってヘムになるの?
多くの場合、生体内に存在する物質は、ただ飲むだけではその本来の居場所や効果を発揮すべき場所にたどり着くことができません。ガソリンを車の後部座席にまいても走り出さないように、生体内物質も適切な方法で供給されて初めて機能することができます。しかし、5-アミノレブリン酸(5-ALA)の場合、2つの「偶然」が重なり合うことにより、口からの摂取によりヘムへの変化という本来の機能を発揮することができます。つまり5-ALAは口から摂取され、細胞内に取り込まれてその効果を発揮できます。
1つめの「偶然」は、体内で作られる5-ALAが、奇妙な方法でヘムへと組み立てられる点です。5-ALAはミトコンドリアという細胞内の小器官で生まれますが、生まれた5-ALAは一度ミトコンドリアの外に吐き出されます。外でほぼ最終形まで組み立てられた後、なぜか再びミトコンドリアへ取り込まれ、最後のステップである鉄(鉄原子)の結合によりヘムが完成します。なぜこのような一見無駄な動きをするのかはっきりと分かっていませんが、はるか太古、ミトコンドリアは我々に「寄生」する別の生物であったものが、進化の過程で単独で生きる術を失い、我々の中の小器官へと変化したことと関係しているのではと考えられています。我々の祖先が、エネルギーを大量に作る能力を持つミトコンドリアを使役するために、その能力の一部を奪い取ってしまった結果、ヘムを組み立てる途中のプロセスが「我々側」、つまりミトコンドリアの外で行われるという奇妙なルートを辿るのかもしれません。
2つめの「偶然」は、5-ALAの大きさです。通常、5-ALAのような水に溶けやすい物質は細胞を通り抜けることができないのですが、5-ALAはタンパク質(食物)が分解されてできるアミノ酸が二つ連なった構造(ジペプチドと呼ばれます)とちょうど同じくらいの大きさ、構造であるため、細胞表面にあるジペプチド用の入り口(トランスポーターと呼ばれます)を通って細胞内に入り込むことができるのです 。
この二つの「偶然」により、飲んで取り込まれた5-ALAは体内で作られた5-ALAと細胞内/ミトコンドリア外で混じりあい、ヘムを構成することができます。この「偶然」が果たして本当に偶然なのか、それとも必然、つまり進化の上でこの性質が生存競争においてなんらかの理由で有用であったためなのかは、神のみぞ知るといったところでしょうか。いずれにせよ、我々は5-ALAを口から摂取することにより、その恩恵を受けることができるように設計されているのです。

細胞とミトコンドリアと5-ALAの関係
5-ALAの作用メカニズム (以降は動物実験を中心とした5-アミノレブリン酸(5-ALA)の学術研究成果を紹介するものであり、人間への疾患治癒効果や健康食品の効能、効果を謳うものではありません。5-ALAの医学的効果については決して自己判断せず、必ずかかりつけの医師にご相談ください。)
その①:
ミトコンドリアの活性化、増殖
上述したように、ミトコンドリアは5-ALAを生み出す細胞内の小器官ですが、そのもっとも大きな役割は、食物と酸素からエネルギーを作ることです。他ならぬ「呼吸鎖複合体」はミトコンドリアの中に存在しており、ミトコンドリアで作られたヘムはその場で呼吸鎖複合体の活性中心として取り込まれます。我々は、実験により5-ALAを摂取した動物のミトコンドリアの呼吸鎖複合体を調べ、驚くべきことにその活性、つまりエネルギーを生み出す力が向上していることを発見しました。
呼吸鎖複合体は食物由来のエネルギーを一度電気エネルギーに変換したのち、アデノシン三リン酸(ATP)という物質を生み出す働きを持っています。このATPは、生命のあらゆる活動のエネルギー源として使われます。その様子がまるで経済活動におけるお金のようであることから、「生体のエネルギー通貨」とも呼ばれるATPですが、5-ALAはこのATPを増やす作用があったのです。
我々は別の動物実験において、5-ALAを飲むことでミトコンドリアそのものが細胞内で増殖することも発見しました。
呼吸鎖複合体は食物由来のエネルギーを一度電気エネルギーに変換したのち、アデノシン三リン酸(ATP)という物質を生み出す働きを持っています。このATPは、生命のあらゆる活動のエネルギー源として使われます。その様子がまるで経済活動におけるお金のようであることから、「生体のエネルギー通貨」とも呼ばれるATPですが、5-ALAはこのATPを増やす作用があったのです。我々は別の動物実験において、5-ALAを飲むことでミトコンドリアそのものが細胞内で増殖することも発見しました。ミトコンドリアが増えることで5-ALAが増えるのではなく、その逆の現象が起きるのは不思議にも思えますが、我々はその後ろにあるメカニズムを探っています。
ミトコンドリアは我々にとって不可欠な存在である一方、異常をきたすことで生体に有害な物質を発する諸刃の剣でもあります。多くの疾患の原因を辿るとミトコンドリアの機能不全、異常な活動に行きつくとも言われていることから、我々は5-ALAのミトコンドリア活性、増殖効果が疾患の治療に応用できないか、日々研究を重ねています。ミトコンドリアが増えることで5-ALAが増えるのではなく、その逆の現象が起きるのは不思議にも思えますが、我々はその後ろにあるメカニズムを探っています。
その②:
がん細胞の検出と治療
5-ALAからのヘム生成は、最後に中心部に鉄が結合することで完了します。ヘムの一歩手前、鉄がはまり込む前の物質はプロトポルフィリンIX(ナイン; 略してPpIX)と呼ばれますが、この物質にはユニークな特徴があります。ある波長の青い光を当てると、赤い光を跳ね返す性質を持つのです。普通の細胞にDNAの突然変異がおき、あるとき無限に増殖する性質を持ってしまったのがいわゆるがん細胞ですが、がん細胞はヘムを作る仕組みにも異常をきたしていることが多々観察されます。大量の5-ALAを取り込んだがん細胞は正常にヘムを作ることができず、一歩手前のPpIXをため込むことが知られています。そのため、がん細胞を移植した動物に5-ALAを取り込ませ、しばらくしてから青い光を当てると、普通の細胞ではヘムになっている5-ALAががん細胞ではPpIXで止まってしまうことから、がんだけを赤く光らせることができると考えられました。この性質は比較的古くから知られ、実際に確認されており、目では見つけられないような小さながんを見つける方法(光力学診断; PDD)として、多くの研究者が研究を進めてきました。
一方で、PpIXは光を浴びると活性酸素という細胞にとって猛毒となる物質を生成することも知られています。これを応用して、がんだけを選択的に狙い撃ちして死滅させる方法として、光力学的療法(PDT)が注目されています。最近では、光が多くの種類のがん細胞が存在する体内の深部まで届かないという弱点を克服するため、超音波や放射線などさまざまな方法でPpIXから活性酸素を放出させる取り組みを行っており、従来の技術とはまったく異なるがん治療法として確立できることを期待しています。
その③:
ヘムの分解による抗酸化、免疫調整
多彩な機能を持つヘムですが、本来存在すべきではないところに存在してしまうと、活性酸素を生み出すことでかえって生体にとって有毒な存在となることが知られています。この厄介な代物を制御するために生体が生み出したのが、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)と呼ばれる酵素です。HO-1は、過剰なヘムが作られるとそれらを壊し、生体内のヘムの量を一定に保ちますが、興味深いことに、ヘムが壊れてできるビリルビン、一酸化炭素という物質自体が活性酸素を消す働きを持ちます。そのため、HO-1はヘムによるものに限らず活性酸素を検知すると大量に作り出され、ヘムを分解することで生体の防御反応を担います。
5-ALAを大量に投与した動物において、そのほとんどはヘムのまま体内に留まることはありません。
我々は、血中に取り込まれた5-ALAの一部がHO-1によりヘムを経由してすぐにビリルビンになっていることを発見しました。このことに着目し、5-ALAがHO-1を誘導し、ビリルビン、一酸化炭素を生み出すことにより強力な抗酸化作用(活性酸素を消す作用)を持つことを示しました。
さらに、5-ALAはただ抗酸化作用を持つだけではなく、免疫細胞の中でHO-1を上げることで、本来は異物を攻撃するべき免疫細胞が暴走し、生体に害を与えるような過剰な反応を抑える作用も持つことを発見しました。
多くの企業がHO-1を標的に薬剤を開発しています。当社はその中でも5-ALAの作用を応用して、HO-1にヘムを供給しながら誘導するというユニークな観点から唯一無二の薬剤候補として研究開発を行っております。
以上、SBI Pharma社HPより抜粋でした。
上記記載の通り5-ALAは、現在では微生物発酵技術により、大量生産が可能になっています。そして微生物発酵技術による日本唯一の生産工場が静岡県袋井市に有ります。
私は静岡県人ですが全然知りませんでした。まだまだ世間には知られていないようです。静岡県人の皆様、ぜひ日本中に広めてください。
KIYAN PHARMA袋井工場https://kiyan.jp/corporation/fukuroi
ウィキペディアによると次のような効用及び用途が報告されています。
エネルギー代謝の促進と肥満予防
5-アミノレブリン酸(には、エネルギー代謝を亢進させ、脂肪の蓄積を抑制する効果があることが研究で確認されています。動物実験では、5-アミノレブリン酸をマウスに与えることで酸素消費量の増加や体温上昇が観察され、14日後には内臓脂肪の蓄積が有意に抑制されました。また、ミトコンドリア機能の向上と脂肪細胞内の脱共役タンパク質(UCPs)の増加も確認されています。このように、5-アミノレブリン酸は代謝を高め、肥満を予防する可能性が示唆されています。
運動機能の向上
5-アミノレブリン酸は運動効率にも影響を与え、高齢女性を対象に行われた研究では、5-アミノレブリン酸と鉄を併用することで運動中の酸素消費量と乳酸濃度が減少し、運動の効率が改善されることが確認されました。また、自宅での歩行トレーニングの達成率も大幅に向上しました。これにより、5-アミノレブリン酸が運動パフォーマンスを向上させる可能性が示唆されています。
サルコペニアと耐糖能の改善
5-アミノレブリン酸の摂取は、サルコペニア(筋肉量の減少)や耐糖能異常の改善にも効果があるとされています。動物実験では、5-アミノレブリン酸を投与されたマウスで筋肉量や持久力が増加し、耐糖能が改善しました。さらに、BCAA(分岐鎖アミノ酸)の増加や、ミトコンドリア活性化因子の上昇も確認されました。これらの結果から、5-アミノレブリン酸は筋肉の老化を遅らせ、耐糖能を向上させる可能性があります。
健康寿命の延長
5-アミノレブリン酸は加齢による筋力低下や虚弱の予防にも寄与することが示されています。ショウジョウバエの実験では、5-アミノレブリン酸と鉄の併用によって、加齢に伴う運動機能の低下が緩和され、寿命の延長が確認されました。また、ミトコンドリア機能の維持も観察され、これにより加齢に伴う筋力低下を予防する可能性が示されています。
肌の保湿とコラーゲン密度の向上
5-アミノレブリン酸は、肌の保湿性とコラーゲン密度の改善に効果的であることが示されています。中年女性を対象に行われた複数の試験において、5-アミノレブリン酸の摂取は肌の乾燥を改善し、コラーゲン密度を増加させることが確認されました。たとえば、無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、45〜64歳の女性が12週間にわたり5-アミノレブリン酸サプリメントを摂取した結果、頬のコラーゲン密度が有意に増加し、角質層の水分量(SCH)も改善しました。特に高容量の5-アミノレブリン酸摂取が効果的であったと報告されています。また、化粧品として5-アミノレブリン酸を使用した場合にも、顔の水分量の増加やシワの減少が確認されました。
線維芽細胞の代謝促進
5-アミノレブリン酸は、正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)の代謝を促進することが明らかにされています。試験では、5-アミノレブリン酸の濃度が2-20μMであればコラーゲンとヒアルロン酸の産生が促進されるものの、細胞の増殖は観察されませんでした。一方で、ミトコンドリアの活性化には200μM以上の高濃度が必要であり、5-アミノレブリン酸が代謝プロセスにおいて多面的な役割を果たしていることが示唆されています。
肌の弾力性と水分保持力の改善
中高年女性を対象とした別の無作為化二重盲検試験では、5-アミノレブリン酸の摂取が肌の弾力性に有意な改善効果をもたらすことが報告されています。この試験では、頬の粘弾性パラメータ(R2、R5、R7)の改善が確認され、特にR5とR7の数値が摂取群で有意に改善しました。また、掌側前腕の水分量も有意に増加し、5-アミノレブリン酸が肌の保湿と弾力性の両方に対して効果を発揮することが示されています。
発毛効果
5-アミノレブリン酸は、発毛効果に関しても期待されています。研究によると、5-アミノレブリン酸と鉄イオンの組み合わせがマウスにおいて有意な発毛促進効果を示し、その効果は従来の育毛剤である5%ミノキシジルと同等であることが確認されました。5-アミノレブリン酸はヘムの生成を促進し、ATPの生成を通じて毛周期の調整に関わると考えられています。また、この効果は皮膚の上皮細胞や線維芽細胞の増殖とは無関係に発揮されることが示唆されています。さらに、5-アミノレブリン酸と鉄の組み合わせによる新たな発毛治療の可能性が指摘されています。
男性不妊への効果
5-アミノレブリン酸と第一酸化鉄の組み合わせによる治療は、男性不妊症の改善にも効果があることが示されています。精子減少症および精子無力症の男性を対象とした試験では、5-アミノレブリン酸と第一酸化鉄を12週間にわたり投与した結果、精液量、総精子数、精液濃度、運動率が大幅に改善しました。特に、総精子数や運動精子数は増加し、男性不妊に対する新しい治療法として期待されています[15]。また、別の研究では、加齢男性症候群(LOH)患者に対する5-アミノレブリン酸の摂取が症状の改善に寄与し、身体的・心理的なスコアに対しても有意な効果を示しました。
抗炎症効果
5-アミノレブリン酸には抗炎症作用も認められています。リポ多糖(LPS)で刺激したマクロファージにおいて、5-アミノレブリン酸は炎症性メディエーターの発現を抑制し、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6など)のレベルを低下させることが確認されています。また、マクロファージの貪食能には影響を与えず、抗炎症効果を発揮することが示されました[17]。さらに、5-アミノレブリン酸と鉄イオンの組み合わせが、末梢血単核球におけるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の発現を誘導し、免疫応答を制御する可能性が示唆されています。この効果は自己免疫疾患や臓器移植後の拒絶反応に対する治療に役立つ可能性があります。
医薬
医療分野においては光増感剤として、光線性角化症やニキビの治療薬(光線力学的療法、PDT)に用いられており、近年ではレーザー照射と組み合わせて脳腫瘍の術中診断(光線力学的診断法、PDD)に用いられる。また、皮膚癌等の癌の治療も試みられている。また、2018年には、京都大学の和田敬仁准教授らが、難病の一つATR-X症候群の治療薬としての可能性を示唆する論文を発表している。
- アミノレブリン酸塩酸塩は製品名「アラグリオ」として、青色光線(400~410nm)を用いた光力学診断を併用した経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)に用いられる。
2021年2月9日、長崎大学の北潔教授によると、5-アミノレブリン酸を試験管内で一定量以上投与すると、SARS CoV-2の増殖を阻害・抑制することが確認された。2月4日からヒトへの臨床試験も開始されている。
糖尿病に対する効用
5-アミノレブリン酸は、クエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)と組み合わせることで、糖代謝に好影響を与える可能性が示されています。軽度の高血糖を示す被験者を対象とした2013年の研究では、5-アミノレブリン酸とSFCの高用量を12週間摂取したグループにおいて、空腹時血糖値、血清糖化アルブミン、糖負荷試験の2時間値に改善が見られ、特に糖尿病に近い被験者ではその効果が顕著でした。また、2012年の研究では、境界型糖尿病患者が3か月間5-アミノレブリン酸を摂取した結果、経口ブドウ糖耐性試験で2時間後の血糖値が低下し、耐糖能の向上が認められました。
2型糖尿病患者を対象にした2016年の研究では、既に抗糖尿病薬を使用しているにもかかわらず血糖コントロールが困難な患者に対し、5-アミノレブリン酸とSFCの組み合わせを1日200mgまで使用することで安全性が確認され、副作用の発生率に有意な差はなく、報告された最も頻繁な副作用は胃腸に関するもので、これは糖尿病患者における5-ALAの既知の安全性プロファイルに一致していました。さらに、低血糖のリスクや他の臨床的な問題は認められませんでした。また、2014年の研究では、15mgの5-アミノレブリン酸を摂取した群で4週目と8週目にわずかにHbA1cの低下が見られ、50mgの群では顕著な変化はなかったものの、下降傾向が示されました。
一方で、ミトコンドリアのATP産生障害によるインスリン分泌障害が特徴の母系遺伝性糖尿病・難聴(MIDD)の患者を対象とした2023年の試験では、5-アミノレブリン酸とSFCの組み合わせによるインスリン分泌の改善は認められませんでした。
コロナウイルス(COVID-19)に対する効用
5-アミノレブリン酸は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗ウイルス効果が報告されており、その有用性が注目されています。培養細胞での実験[29]において、5-アミノレブリン酸はウイルス感染を効果的に阻害し、細胞毒性が認められなかったことから、新たな治療法の候補として期待されています。
また、5-アミノレブリン酸とクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)の併用療法は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などを併発した重症COVID-19患者に対し、安全性と有効性が確認されています。この治療法では、RNAウイルスの複製を抑えるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)を誘導し、炎症を軽減することで、患者の回復を促進することが示されています。
さらに、COVID-19の後遺症を持つ患者を対象としたランダム化臨床試験において、5-アミノレブリン酸とクエン酸塩化ナトリウムの併用が症状の改善に有効であることが示されました。この試験では、スマートデバイスを使用した生体情報のモニタリングも行われ、5-アミノレブリン酸/SFCの服用により、疲労感や糖コントロールの改善が観察されています。
これらの研究結果から、5-アミノレブリン酸はCOVID-19の予防や治療補助薬としてさらなる研究が期待される有望な物質とされています。
熱帯熱マラリア原虫に対する効用
5-アミノレブリン酸は、マラリアの原因となる熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の増殖を抑制する効果が示されています。ある実験では、5-アミノレブリン酸を0.2 mM添加した後に白色光を照射すると、原虫の増殖が完全に抑制されました。
また、光を照射しなくても、5-アミノレブリン酸を高濃度(2 mM)で投与することでも同様に増殖が阻害されました。しかし、5-アミノレブリン酸による光線力学療法(PDT)をマラリア患者の治療に直接応用するのは臨床的に難しいとされています。そこで、5-アミノレブリン酸にクエン酸第一鉄ナトリウム(SFC)を併用した場合、この組み合わせが新たなマラリア治療法として注目されています。この併用により、マラリアの化学療法において有望なターゲットになる可能性が示されています。
中枢神経系に対する効用
うつ症状の改善
5-アミノレブリン酸の摂取は、うつ症状の改善に効果があるとされています。特に、5-アミノレブリン酸とSFC(シロキサンフェリックコンプレックス)の併用が、運動強度に伴う身体的負担を軽減し、うつ病患者が運動を続けやすくなる効果が示されています。無作為二重盲検クロスオーバーパイロットスタディによると、5-アミノレブリン酸+SFCの摂取により運動の実施率が向上し、うつ症状が改善されたことが報告されています。
パーキンソン病への効果
パーキンソン病の発症に関与するミトコンドリアの機能低下を改善するため、5-アミノレブリン酸とSFCが注目されています。これらの物質はミトコンドリア内でATPやシトクロムオキシターゼ(COX)の産生を促進し、運動症状や非運動症状の改善に寄与する可能性が示唆されています。
アルツハイマー病に対する効果
5-アミノレブリン酸は、早期アルツハイマー病(AD)においても効果が期待されています。特に、アルツハイマー病患者で低下するシトクロムcオキシダーゼ(COX)の活性を高めることで、脳のミトコンドリア機能を改善し、神経活動の維持に貢献します。動物実験では、5-アミノレブリン酸投与によってCOX活性が向上し、シナプスの保存やAβレベルの減少が確認されました。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の改善
自閉症様行動を示すモデル動物において、5-アミノレブリン酸は酸化ストレスの軽減とミトコンドリア機能の改善に効果があることが分かっています。研究では、5-アミノレブリン酸の投与によって社会的行動や記憶機能が改善され、酸化ストレスが減少することが確認されました。
睡眠の質向上
5-アミノレブリン酸は、エネルギー代謝を通じて睡眠の質を向上させる可能性が示されています。直接的な研究はまだ少ないものの、5-アミノレブリン酸が概日リズムや内分泌機能に影響を与えることで、自然な睡眠をサポートすることが期待されています。
疲労とネガティブな気分の改善
5-アミノレブリン酸の経口投与により、疲労感や怒り・敵意といったネガティブな感情が改善されることが確認されています。無作為二重盲検プラセボ対照試験では、5-アミノレブリン酸が疲労や感情の乱れを減少させ、日常的に疲労を感じる被験者に対して有効であることが示されました。
これらの研究から、5-アミノレブリン酸が中枢神経系に対して幅広い効果を持つことが明らかになっています。
がんリスク評価
尿中のがん細胞由来代謝物と酸化物質を調べることで、がんのリスク評価を行うものである。注射や痛みを伴わない非侵襲性の評価方法となっている。リスク評価には健康食品区分のALAカプセルを利用する。
米国(シカゴ)にて開催されたASCO 2020、米国癌治療学会議(American Society of Clinical Oncology Annual Meeting)において、ALA-PDSの肺がん患者を対象とした解析研究結果が、帝京大学医学部附属病院、山内良兼医師らにより報告されている。
成果は、5-アミノレブリン酸を用いた簡易的がんリスク評価法の検討試験(倫理審査委員会承認番号:17-138、研究実施責任者:山内良兼医師)として行われた医師主導臨床研究の成果の一部である同報告において、肺がん患者群では健常ボランティア群に比べ、尿中ポルフィリン代謝物が有意に上昇していること、ステージ0又はステージIの早期肺がん患者群においても上昇することが示されたこと、PET-CTが陰性であった肺がん患者群でも上昇が確認されたことから、非侵襲性で簡便なリスク評価指標、あるいは診断補助指標として同手法が優れていることを示すエビデンスとなっている。
農業
光増感剤の作用による除草剤として考えられていたが大量に使わないと効果がなく、逆に成長を促進する現象が見られて断念、肥料として使用する研究がされた。低濃度のアミノレブリン酸と微量のミネラルを配合した水溶液を植物に散布すると、葉緑素が増えて成長を促進させることが発見され、これを添加した液体肥料が販売されるなど、農業分野においても応用されている。
耐塩性の向上
5-アミノレブリン酸は、植物に塩害への耐性を付与する効果が確認されています。宇都宮大学の倉持らは、綿の幼苗に5-アミノレブリン酸を投与し、食塩水を加える過酷な条件下での実験を行い、5-アミノレブリン酸が耐塩性を向上させる効果を発見しました。5-アミノレブリン酸が生成するヘムやクロロフィルが、この耐塩性に寄与していると考えられています。また、5-アミノレブリン酸で処理された植物はナトリウムの含有量が少なく、光合成による糖分の増加で浸透圧が上昇し、塩の侵入を防ぐ効果も見られています。
乾燥地や半乾燥地など、厳しい環境下での農業では、土壌の塩分集積が問題となります。そこで、5-アミノレブリン酸を使った植物の耐塩性向上技術が注目されています。このような環境下でも農業が可能となるように、5-アミノレブリン酸の強い耐塩性付与効果が研究されており、化学的な方法で植物に塩害耐性を付与する新たな試みとして紹介されています。
作物の増収・品質向上
植物の光合成を促進し、成長を助ける効果があることが確認されています。5-アミノレブリン酸を安定的に効果を発揮させるため、ミネラルを配合した高機能肥料の開発が進められており、これが作物の収量増加や品質向上に寄与しています。施設園芸や各種作物に適用され、今後、砂漠化や地球温暖化といった環境問題への貢献も期待されています。
さらに、5-アミノレブリン酸はクロロフィルやヘムなどの前駆体であり、植物の成長に重要な役割を果たしています。1987年から5-アミノレブリン酸の生産技術が研究され、その植物成長促進効果を応用した肥料が2001年に登録・販売されました。この肥料は「ペンタキープV」として、施設園芸を中心に利用され、様々な作物で成果を挙げています。
アルカリ土壌での効果
アルカリ性の土壌は作物の成長を妨げる要因ですが、5-アミノレブリン酸と微量要素を組み合わせることで、この環境でも収量を確保することが可能です。例えば、5-アミノレブリン酸とキレート鉄、ペンタキープVを組み合わせた処理により、コマツナの収量低下を防ぐことができたことが報告されています。これにより、アルカリ土壌における作物の安定生産が期待されています。
殺虫剤としての可能性
5-アミノレブリン酸は殺虫剤としての効果も研究されています。5-アミノレブリン酸を利用した新しい殺虫剤は、昆虫体内でポルフィリンを大量に蓄積させ、その結果、光の有無にかかわらず昆虫を死に至らしめます。特に光線力学的な作用がこの効果に寄与しており、完全に生分解性の殺虫剤として、持続可能な農業への貢献が期待されています。
畜産
5-アミノレブリン酸は畜産において、繁殖能力や仔豚の発育に対して有益な効果をもたらす可能性があり、黒毛和種や豚の飼育における新たな飼料添加物として注目されています。
黒毛和種の精子改善効果
黒毛和種の雄牛に対して精子の活力と質を向上させる可能性が示唆されています。ある研究では、5-アミノレブリン酸を100日間連続で雄牛に経口投与したところ、プラセボ群と比較して精子の奇形率が低下し、活発な前進運動を示す精子の割合が増加する傾向が見られました。この結果は、5-アミノレブリン酸が精子の質を改善し、雄牛の繁殖能力に対してプラスの効果をもたらす可能性を示しています。
仔豚の腸管と免疫系の発達促進
母豚に対して腸管と免疫系の発達を促進する効果があるとされています。母豚に5-アミノレブリン酸を与えた実験では、仔豚の腸管粘膜における遺伝子発現に顕著な変化が見られました。特にミトコンドリアに関連する遺伝子の発現が増加し、GO解析では90のエンリッチされたGO termが確認されました。この結果から、5-アミノレブリン酸が仔豚の腸管発達や免疫系の発達を促し、離乳後の絨毛萎縮の軽減や回復を助ける効果が期待されています。
製造法
発酵法
協和醗酵工業とコスモ石油において光合成細菌に由来するDNAを導入したコリネバクテリウムによる大量生産法が確立されている。また、コスモ石油はロドバクター属の菌に対して光照射を必要としない条件下での5-アミノレブリン酸の製造にも成功している。
現在はKIYAN PHARMA株式会社が運営する、キヤンファーマ袋井工場が日本で5-ALAを製造している唯一の工場である。
5-ALAはいろいろな分野で使える、役に立つ将来性のある物質です。政府による企業支援があると大化けする可能性が有ります。政治家の皆さん、特に地元の政治家の皆さん、ぜひ注目してやってください。世の為、人の為になる産業です。
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